2008年08月29日

「ペシャワール会」の伊藤さん

 8月末、日本のNGO「ペシャワール会」の伊藤和也さんがアフガニスタンで活動中、殺害されるというニュースが流れ、大きなショックを受けました。 「ペシャワール会」はささやかながら、私も協力させていただいている頼もしいNGOで、代表は中村哲医師、クリスチャンですが、「ペシャワール会」は全く宗教色を出さない団体です。

 2001年アメリカ同時多発テロが9月11日、10月8日にはアメリカのアフガン空爆が始まり、動乱の最中の11月、鎌倉雪ノ下カトリック教会で、中村哲医師のアフガニスタン緊急報告会が開かれ、大きな関心をもって聞きにいきました。

 会場は満員、2時間立って聞いた人もたくさんいました。話はアフガニスタンのとんでもなく厳しい実態を、淡々に訥々と静かに語ったもので、それだけに真実の重みがビシビシ伝わってくるものでした。アフガニスタンに大干ばつが起こり、国際規模の支援が行われるのかと思ったら、国連の制裁が行われ、そして爆弾だったと。実態は報道と大きく違うのだと。

 質疑応答の最後の質問は高校生で、「普通の私たちに先生はいったい何を望むのですか?」というものでした。すると中村医師は「私はそんな偉い人でないから、答えられないけれど、何をしてはいけないかは言うことはできる。大人たちのすることを丸呑みにしてはいけない。世界的にできあがったニュースを鵜呑みにしてはいけない。私たちは自由なようでいて、本当は自由ではない。何が正しいのか、本音は何か、鋭く見て欲しい。世界を研ぎ澄まされた目で見る、その目を養って欲しい。」という答えでした。

 伊藤さん殺害の犯人はタリバンという報道ですが、私は中村医師の報告会を思い出して、伊藤さんを殺したのは、国際社会だと思いました。アフガニスタンの救済どころか破壊し追い詰めた国際社会が、長年現地で地道な支援活動を続けているNPO職員にも死をもたらしたのだと。中村医師はタリバンを「これまでで最も血なまぐさくない政権だった」と言っていて、タリバンをかばうのかと批判されたこともある人です。おそらく中村医師もタリバンを憎むという発言はしないと思います。

 「ペシャワール会」は伊藤さんの志望動機の文章を公表しました。
「---語学は、はっきりいってダメです。農業の分野に関しても、経験・知識ともに不足していることは否定できません。ただ私は、現地の人たちと一緒に成長していきたいと考えています。---アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたいということです。これは2年や3年で出来ることではありません。子どもたちが将来、食料のことで困ることのない環境に少しでも近づけることができるよう、力になれればと考えています。甘い考えかもしれないし、行ったとしても現地の厳しい環境に耐えられるのかどうかもわかりません。しかし、現地に行かなければ、何も始まらない。そう考えて、今回、日本人ワーカーを希望しました。」
私は伊藤さんの、まっすぐな目と力強い若者の心意気に感動しました。

 「平和とは武器によって作り出すものではなく、水と緑によって人々の生活を保障することです。」という中村医師は、ハンセン病治療のためにアフガンに入った医師ですが、独学で土木工学を学び、井戸を掘り、用水路を作り、農業指導の活動もしています。

 アフガニスタンは世界のケシの9割を産出している国で、貧困にあえぐ農民が乾燥に強く利益の高いケシを栽培し、タリバン政権時代に一度は激減したケシ畑が急速に広がっているそうですが、「ペシャワール会」の活動はこれを根本から解決する正道だと思います。この農業指導を担当していた伊藤さんの活動は、大きな意味をもっていました。約1000人の地元住民が捜索活動に加わり、葬儀の参列希望者は数1000人だったそうです。

 伊藤さんの死は、痛ましく残念です。私にできるせめてものことは、今年の「ペシャワール会」への寄付をいつもの倍にすることくらいです。今後も活動を継続するという「ペシャワール会」と中村医師と、伊藤さんのご両親に対するエールとして。

2001年11月鎌倉で開かれた中村医師の報告会にいったときのレポートをUPしています。
posted by jun at 11:41| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
伊藤さん失踪のニュースが流れた時、すぐにjunさんを思い出しました。
こういう地道に奉仕している人が無残に殺されてしまったことに、言いようの無い悲しい気持ちになりました。
私も犯人は実際に手を汚した人ではなくそう仕向けた何かが問題で犯人を捕らえても何の意味も無いように思います。
誘拐された時はうろたえていたお母様が今日の葬儀では気丈にコメントされていて立派だなと感じました。彼の死を捻じ曲げて利用しようとする人に憤りを感じます。
Posted by mitsu at 2008年09月02日 00:44
mitsuさん、こんにちは。
私のことを思い出してくださったとは、ありがとうございます。

ペシャワール会は、今回の事件に対してきちんと態度を表明していると思いますし、今後も変わらぬ姿勢を継続しようとしています。
そのためには、多くの支援者と報道にまどわされない多くの理解者がますます必要になってくると思います。

中村医師の報告会が近くで開かれたら、是非また参加したいと待っています。
中村医師とスタッフの健康と安全が守られるよう、切に祈っています。
Posted by jun at 2008年09月02日 20:22
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