2006年12月24日

麻原彰晃と水俣病

麻原彰晃は水俣病だったという大スクープが書かれているのは、2006年10月発行、藤原新也「黄泉の犬」(文藝春秋)。



黄泉の犬


大スクープが書かれている本にしては、深い瞑想のようなものが漂っている不思議な本です。淡々とした事実と藤原さんの想いとで織りなされた、神秘的な織物ようのようです。

藤原さんが麻原の兄と出会い、聞き出だしたことが衝撃的です。兄弟は水俣のすぐ隣の熊本県八代で生まれ育った。水銀汚染がひどかった時期、水俣と同じ不知火海でとれた魚介類を大量に食べていた。小さい時は兄弟とも目が見えていたが、手がしびれ目が見えなくなった。水俣病の申請をしたけれども、認可されなかったと。麻原の兄も眼が不自由なのです。

藤原さんは兄から、「ワシの目の黒いうちはどげも話しちゃいかんぞ」と言われ、その兄が亡くなったので本に書いたのでした。でも、水俣とオーム真理教はタブー。この本は衝撃的な内容なのに、マスコミからは無視されています。

戦後日本の発展を担った化学肥料プラントのトップ企業チッソは、日本の国策企業で、犠牲者を出してそれと知りつつも水銀を流し続けた。中央は多少の犠牲はやむないと判断し、日本は水俣の犠牲の上に発展した。その犠牲者の一人である麻原が、国家機能を止めようと妄想し、都心にサリンを撒いたのではと、藤原さんは想うのです。

メチル水銀の症状に視野狭窄があって、麻原の目も視野狭窄。麻原がこだわったサリンも視野狭窄という症状があります。地下鉄サリン事件は、麻原の怨念と復讐なのではと。

八代からは水俣病患者は出ないというのが通説だそうです。藤原さんは熊本県の水俣病対策課に問い合わせますが、県の防御は強固。患者がいわれのない迫害や誹謗中傷を受けていることもあって、水俣病に関する事項は特秘扱い。そしてやっと聞き出したことが、平成18年現在、八代地区の水俣病未認定患者は51名、認定患者も相当数いることでした。

麻原の兄の言葉が真実なのかどうかは、藤原さんが聞いたというだけで確かめようがありません。麻原が未認定患者なのかも、熊本県が情報を出すとは思えませんし。ただ、麻原の育った場所のすぐ隣で、大規模で悲惨な公害問題があって、住民が日本国の犠牲となったというのは事実です。こういう視点で水俣病を考えたことがなかったので、新鮮な驚きを持ちました。

私は、麻原がたとえ水俣病患者であったとしても、決してそれが水俣病への偏見や差別を助長する方向へ、問題がすり変えられないよう願います。


田口ランディのブログ2006.11.14に書かれています。
『黄泉の犬』が問いかけているのは「今、この時代を生きる私たちの有り様」であり、オウム真理教という宗教集団に入信していった者たちのなかに、私たちがいかに「よりよく生きたいと願い、もがいている存在か」を見ているのだ。もがけばもがくほど、この社会の恐るべきラーメン構造のなかに入れ子にされてがんじがらめになってしまう私たちの「寄る辺なさ」に、近代の断末魔を見ているのだった。
社会のラーメン構造という意味がわからないので調べてみました。ラーメンとは中華そばのラーメンではなくて、ドイツ語の額縁という意味のようです。社会の枠組みの中でという意味だと思います。

藤原新也公式ページ

藤原さんは、田口ランディさんのことを雑感2006.12.22 に書いています。
京都帰りの田口ランディさんにお立ち寄りいただいて、雑談の楽しいひとときを過ごした。彼女の書きものは誤解されがちだが、ものの見方が非常に硬質で、ゆるぎがない。その点で失礼だが女性には珍しく男性的思考の持ち主だと見る。


田口ランディのブログ2006.12.31で、「田口ランディは、水俣病と麻原彰晃を結びつける視点を絶賛している」という声に対して、「わからないことはわからない」とさらに説明しています。

麻原彰晃と水俣病を結びつけると、あまりにもうまく噛み合いすぎて気持ちが悪い。

安直にすっきりと、二つの事柄が関連づけて語られるのはおかしいと感じている。

これまで私は、水俣病患者か、そうでないか。そのどちらかの人からしか話を聴いていない。でも、水俣病患者の周辺にいて「自分が水俣病かもしれなという危惧をもちつつ黙って生きてきた人たち」という、そのような人たちの話を聞いたことがなかった。でも、そういう辺縁の人たちに与えている影響は、案外と大きいのかもしれないと、気がついた。


公害が発生した地域に住む人たちには、認定されたかされなかったかという大きな区別がありますが、それは便宜的なもので、線引きなんかできないのが現実ではないかと思います。


posted by jun at 06:04| Comment(1) | TrackBack(1) | 本からA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
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Posted by 価格 腕時計 at 2013年08月03日 13:26
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